妄想と現実と中距離恋愛

大学生の駄文です。

メッセンジャー

「ごめん、実家に携帯忘れたから」

そう彼からメッセージが届いたのはちょうど半年記念日の日。記念日だからとか関係なくくだらない話したいことが溜まっていたから今日は風呂から上がったら電話しようかな、と思いつつ携帯をのぞいた時だった。

しかし彼からメッセージが届いたのはいつも使うLINEではなく、Facebookメッセンジャー。所謂DMみたいな機能だ。

彼からメッセンジャーで連絡がくるのは付き合うよりももっと前、去年の夏以来だ。

彼氏でも好きな人でもなかったとき、初めてのデートをしたときのことを思い出した。

テスト期間、勉強に飽きてメール整理をしつつ昔のメールを見ていたときに数年前に彼と最後に交わしたメールを見つけた。今何しているんだろう、あのときのことを彼は覚えているだろうか。今なら許してくれるだろうか。

そんなことを思ったものの当時の私はLINEを知らず、知っていたSNSFacebookだけ。なぜか彼に会いたくて、無性に会いたくなって、

「久しぶり、突然ごめんね、何年か振りに会いたいな」

メッセンジャーでメッセージを送ったのだ。今思えばとんでもない行動力である。

それからデートまでの日数はくだらない話をしようとするも彼の興味のなさそうな返答(返すのが下手なだけだとわかったのはしばらくしてからである)に寂しさを感じてそんなに連絡をしなかった。

デートをしてからはLINEを交換し、たまに電話したりLINEをしたりが当たり前になっていたが、今になってメッセンジャーを見返すと恥ずかしい。赤面ものだ。自分が打っていたのにぎこちなくて目をそらしたくなる。

 

そんな感じで懐かしくも恥ずかしくなりながら

「なにしてんの(笑)携帯返ってきたらまた連絡してね」

と打った。絶対に返事が返ってくる、彼の塩対応に不安になる必要もないのだ、という安堵にも自信にも似たような感情を抱きながら。

小説家になりたくて

同じような人に憧れてきた

 

長いスカートをはいて

ちょっと個性的なコートを着て

めがねが似合って

黒髪のボブで

写真がうまくて

そして何より

文章がキラキラしてて

 

音楽か文章で人を引き付けたかった

自分にはそれしかないから

でも書けば書こうとするほど

何かを研究して

それに近づいてしまって

どうしようもなくて

また戻って

葛藤して

白いヘッドホン

僕はそこまでではないが、彼女は音楽が大好きだ。

彼女の部屋にはバンドのものらしきポスターやグッズがあり、僕が彼女の家に行くときにはほぼ確実に音楽を流している。

前ドライブで旅行したときに彼女のウォークマンから流れた音楽はジャンルを問うていなかった。バンド、ソロアーティスト、アイドル、僕が名前を知っているものから全く知らないものまでたくさんあり、その曲のほとんどを彼女が口ずさんでいたときのニコニコとした横顔をいまでも覚えている。

 

僕はアーティスト名も曲名も知らない人の曲に合わせて歌いながら料理をする彼女を見るのが大好きだった。

 

ある日、僕は彼女とのデートに数十分遅刻した。定時に着くように家を出たのに遅延をしらなかったのだ、まだまだ僕は田舎者だ。

彼女が先に行きたいところに行っている、とLINEで送ってきた先は大きなCDショップだった。無論、僕は1人ではいかないような。

僕が道に迷う時間も含めて小1時間遅れてCDショップに入る。どこのコーナーだろうとキョロキョロとしながら見ていると、ふと視線を下げた先に、彼女がいた。

彼女は僕が誕生日にあげた白くて大きなヘッドホンを着け、棚の1番下にあるCDを手に取っていた。ジャケット写真を裏表くるくる回したり、歌詞カードの隅まで眺める彼女からは、自然と笑みがこぼれていた。

僕は自分が遅刻している身だということを忘れ、陰から彼女を見ていた。

バンドコーナーから離れない彼女は色々なバンドをみたり、ときにはしゃがみこんで1つのCDをじっくり見たり、本当に飽きない様子だった。

 

彼女がふと携帯をみた。時間を確認して、少し寂しそうな様子になる。僕ははっと自分の立場を思い出し、駆け寄った。

「お待たせ、ごめんね」

彼女はヘッドホンから流れる音量が大きかったのか僕の声に気付いていなく、ぽんと叩かれた肩から驚いた様子が伝わった。

 

「びっくりした〜、綾ちゃん遅いからたくさんCD見てたよ」

僕は、うん、見てたよという言葉を飲み込んで、ごめんねと口にし、彼女に手を差し伸べた。

 

いつか、彼女の本気で歌う姿を見たいなと思いながら。

味噌汁の香り

私は歩いている時に、近くの家で香ってくる料理の香りをかぐのが大好きだ。

それでその日の夜ごはんが決まることも少なくない。

 

月に一度会える恋人、綾人と歩いているときにもよくやるのだが、綾人にはそのことを打ち明けたいない。

あ、今日はこの家芋の子汁だな、と綾人と歩いているときに思ったその瞬間

「あー、芋の子汁かな?この匂い、久しぶりに食べたいな」

隣から愛しい人の声がした。

私がびっくりして振り向くと綾人はニコニコして私のほうを見る。

「そうだね、今日は芋の子汁にしようか」

私は綾人の手を強く握り、スーパーへ向かった。綾人も握り返してくる。

 

 

運命なんて信じないけど、この人と付き合えて、手を握り返してくれるのがこの人で、よかった。

 

 

芋の子汁というのは私の地元の東北地方だけらしいです…!あとは芋煮というらしいです…!!

就活と中距離恋愛

 

これは理系学生だった僕が大学院2年生のときの出来事だ。

中距離恋愛をしていた僕と彼女の悠は1ヶ月に一度だけ会っていて、その日もいつものように彼女の家に前日から泊まっていて、僕を送るがてら買い物にいく準備をする彼女を待っていた。
「あやちゃんがいると集中できないんだよね、どうしてもあやちゃんがいるとそっちにかまっちゃうっていうか」
就活が3月に解禁してすぐ、4月半ばのことだった。
僕のことが大好きで1ヶ月会わないことすらこの3年間我慢できたな、という悠から距離置きたいという言葉を聞いて僕は素直にショックを受けた。しかしその言い方はあくまでも明るく、化粧しながら世間話をするようなそれだった。
「ごめん、俺がいるとだめだよね、家にはしばらく来ないようにしようか」
「ううん、綾ちゃんといると多分綾ちゃんのことほんとに嫌いになる、私のせいだけどしばらくは連絡をとるのも嫌かな」
その日は横浜駅の改札で僕を送ったまま彼女は買い物に出かけた、いつもは僕がいなくなるまで振り返るのにその日は絶対にしなかった。

僕は涙が出るまで頭が整理されていたわけではなく、ただ呆然とした気持ちのまま家に帰った。その日の電車は快速なのにやけに遅く感じた。


そこから淡々と就職活動をし、僕は5月半ばには希望してきた業界の一位の会社から内定をもらった。
そこからは修士論文に向けて研究室に通うだけの日々だった。分からないことが研究によってわかる感覚は快感だったが、1ヶ月に一度、横浜まで向かう用事がないのはひどく寂しかった。その寂しさを埋めるように僕は毎日遅くまで研究室にこもっていて、同期に家に帰っていない、あいつは研究室の守り神だなんてからかわれた。

 

7月になった。忘れもしない、悠の誕生日だ。僕と悠の誕生日はちょうど半年違いで、付き合ってから一度も忘れたことはない。今年で一緒に祝う誕生日は4回目になる、はずだった。

僕は意を決して彼女のいる横浜まで向かった。彼女とはあの日から連絡もとっておらず、どこで何をしているかわからなかった。家が変わっていなかったのが不幸中の幸いだ。

1時間ほど彼女の家の前で座って待っただろうか。角部屋であるおかげで人目には着きにくかったが、その日は7月にしては肌寒く、ぼーっと目の前の階段の誇りの数やシミをみるしかしなかった。

 

ガタっ、と音がする。左側を見ると研究室帰りであろう悠と目が合う。小さな花束とプレゼントを持ち、いつものように黒いリュックサックに白いヘッドホンをつけていた。ヘッドホンを外しながら怒っているような、安堵のような表情を浮かべる彼女と目が合う。


「寒かったでしょ、どこかで時間つぶしてればよかったのに」

彼女は苦笑しながらそう言った。いつからいたのか、どうして来たのか、そんなことは1つも聞かれなかった。

彼女について家に入る。当たり前だがこの数ヶ月で間取りも何も変わっていなかった。久しぶりの彼女の部屋の香りに僕は涙が出そうになる。

佇む僕をよそに彼女は花を花瓶にいれたり、郵便物をゴミ箱にいれたりした。

僕は僕の横を通ろうとする彼女の手首を掴み、そのまま抱きしめた。ああ、この香りだ。彼女も深く深呼吸をする。
僕の涙腺が崩壊する前に彼女は僕の腕をそっとほどく、僕と彼女は手を握ったまま向き合う姿勢になる。

「ソファ、座ろうか」

彼女に誘導されてソファに座る、彼女が僕のほうを向いたので僕もまた向き合った。目が合わせられない。
「もう別れたと思ってた」

彼女は正直にそう言った。
「…くるか迷った」
そこからはぼそぼそと、お互い距離を来るか来ないなの話をした。僕はせっかくの誕生日だし、と言い訳気味に呟く。

しばらくの沈黙があったあと、話さないのと不自然だからね、と悠から言い出して、私就職決まった、という言葉を聴く。
うん、と僕は頷くだけをした。
化粧品会社を悠は口にした。名前、わかると僕が答えると一応業界では3位くらいかな、大手だと決まるの遅いところだったからギリギリだったけど、と彼女は苦笑した。おめでとう、と僕は口にした。それしか言えなかったし、それ以上かける言葉が思いつくほど僕の頭は冴えていなかった。


悠が急に僕の胸に頭を預けてきた。
「…会いたかった…ごめんなさい、」
僕は彼女がようやく心を許してくれたと思い、不安ながらも頭をなでる。拒否されないことに安心してそのままそっと抱き締めた。彼女の腕が僕の背中に回される。
「いろいろ話したかった。面接で聞かれた変なこととか、道に迷ったこととか、寝過ごしちゃったこととか。」
「どんだけ大変な就活だったの」
僕がいうと、彼女は静かに笑った。
「でも綾ちゃんいなくてよかった、あやちゃんがいたらほんとにこんなとこ受かってなかった。あやちゃんと比べてた。これでよかった。」
僕はぽんぽんと軽く頭をたたき、肩を抱いて向かい合う姿勢に戻る。
後ろを振り返りカバンをあさり箱を取り出す、それは疎いほうである悠も知っているであろうアクセサリーブランドだった。
僕は指輪の入った箱を出した。蓋を開けて「あのさ、」と話すと、悠がちょっと待ってと僕の言葉を遮った。
それ、もらうの延期してもいいかな
僕は多分、傷ついた顔をしたのだろう。見えないけど想像がついた。
「いや!違うのもらいたくないんじゃない、あやちゃんがどういう気持ちでそれを買ったかはわかんないけどもらったからにはそれなりの覚悟をしなきゃと思ってる、でも来年働き始めてそれでダメになるかもしれない。そのときは私もあやちゃんも嫌だから、ごめんね、少しだけ延ばさせて。」
どのくらい…?と僕は小さく呟いた。
「働いて、しばらくしたら。いつかはわかんないけど。」
「わかった。じゃあそのときははるかから言って。俺持ってるから。」
ごめんね、ありがとうと彼女は言ってまた僕を抱き締める。春に言われた拒否の言葉には感じないあたたかさを感じたため、僕は彼女を信じようと思った。
「これ買いに行くのすごい恥ずかしかった…」僕は彼女を抱き締めたままか細く声に出した。
だろうね、あやちゃんお店にいく姿想像したら面白い。
「ちょっとだけ、ちょっとだけだけど高かったからね、」
ちゃんと受け取れるように頑張ります、とぼくの胸の中で言う彼女。見なくても彼女が微笑んでいるとわかった。大丈夫だ。


その日の夜はファミレスで食べて就活のことをあえなかった三ヵ月分話した。相変わらず安っぽいパスタだったが、話すお供には十分だった。

 

 

公開する作品としては5年ぶりくらいにつくりました。

いつか長編小説を作ろうと思い、その一部です。もしよろしければ評価いただきたいです。

ここが言葉が足りない、表現の工夫などありましたら…あくまでもお手柔らかに…