妄想と現実と中距離恋愛

大学生の駄文です。

白いヘッドホン

僕はそこまでではないが、彼女は音楽が大好きだ。

彼女の部屋にはバンドのものらしきポスターやグッズがあり、僕が彼女の家に行くときにはほぼ確実に音楽を流している。

前ドライブで旅行したときに彼女のウォークマンから流れた音楽はジャンルを問うていなかった。バンド、ソロアーティスト、アイドル、僕が名前を知っているものから全く知らないものまでたくさんあり、その曲のほとんどを彼女が口ずさんでいたときのニコニコとした横顔をいまでも覚えている。

 

僕はアーティスト名も曲名も知らない人の曲に合わせて歌いながら料理をする彼女を見るのが大好きだった。

 

ある日、僕は彼女とのデートに数十分遅刻した。定時に着くように家を出たのに遅延をしらなかったのだ、まだまだ僕は田舎者だ。

彼女が先に行きたいところに行っている、とLINEで送ってきた先は大きなCDショップだった。無論、僕は1人ではいかないような。

僕が道に迷う時間も含めて小1時間遅れてCDショップに入る。どこのコーナーだろうとキョロキョロとしながら見ていると、ふと視線を下げた先に、彼女がいた。

彼女は僕が誕生日にあげた白くて大きなヘッドホンを着け、棚の1番下にあるCDを手に取っていた。ジャケット写真を裏表くるくる回したり、歌詞カードの隅まで眺める彼女からは、自然と笑みがこぼれていた。

僕は自分が遅刻している身だということを忘れ、陰から彼女を見ていた。

バンドコーナーから離れない彼女は色々なバンドをみたり、ときにはしゃがみこんで1つのCDをじっくり見たり、本当に飽きない様子だった。

 

彼女がふと携帯をみた。時間を確認して、少し寂しそうな様子になる。僕ははっと自分の立場を思い出し、駆け寄った。

「お待たせ、ごめんね」

彼女はヘッドホンから流れる音量が大きかったのか僕の声に気付いていなく、ぽんと叩かれた肩から驚いた様子が伝わった。

 

「びっくりした〜、綾ちゃん遅いからたくさんCD見てたよ」

僕は、うん、見てたよという言葉を飲み込んで、ごめんねと口にし、彼女に手を差し伸べた。

 

いつか、彼女の本気で歌う姿を見たいなと思いながら。